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名古屋地方裁判所 昭和42年(ヲ)253号 決定 1967年7月07日

申立人

有限会社名港プロパンガス

被申立人

日本ドレイクタウン株式会社

主文

本件申立は却下する。

申立費用は申立人の負担とする。

理由

一、申立人は「名古屋地方裁判所執行官石原兼光が債権者日本ドレイクタウン株式会社、債務者有限会社名港液化ガス間の名古屋地方裁判所昭和四二年(ヨ)第二七四号仮処分決定に基ずき昭和四二年三月六日なした仮処分の執行による処分行為を取消す。」との裁判を求め、その理由として次のとおり申立てた。

(一)  名古屋地方裁判所執行官石原兼光は債権者日本ドレイクタウン株式会社、債務者有限会社名港液化ガス間の名古屋地方裁判所昭和四二年(ヨ)第二七四号仮処分事件の「別紙目録記載の物件等に関する債務者の占有を解いて名古屋地方裁判所執行官にその保管を命ずる。執行官はその現状を変更しないことを条件として債務者にその使用を許さなければならない。但し右の場合においては執行官はその保管に係ることを公示するため適当な方法をとるべく、被申立人はその占有を他人に移転し、または占有名義を移転してはならない。債務者は右物件について譲渡賃借権の設定その他一切の処分をしてはならない。」との仮処分決定正本に基ずき昭和四二年三月六日申立人占有中の別紙目録記載の物件に対し仮処分執行をなした。

(二)  然しながら、右物件は債権者竹田照之、債務者有限会社名港プロパンガス間の名古屋地方裁判所昭和四一年(ヨ)第一一二三号仮差押決定正本に基ずき昭和四一年七月二三日名古屋地方裁判所執行官職務代行者西原悦範が右仮差押の執行として申立人名港プロパンガスの占有を解き右職務代行者が占有し差押をなし、前記執行官石原兼光が仮処分執行をした昭和四二年三月六日当時は勿論現在に至るまで右物件を継続して占有中のものである。

(三)  即ち、債務者有限会社名港プロパンガスに対する仮差押の執行として債権者竹田照之の委任した執行官職務代行者西原悦範が右物件を占有している以上右職務代行者が差押物件の提出を拒まないか、或は右執行官職務代行者の占有を裁判により排除したような特段の事情のない本件において同一物件に対し重ねて他の債権者から債務者有限会社液化ガスに対する仮処分執行は前執行官の占有と抵触し違法である。そこで本申立をなす。

二、当裁判所の判断

(一)  記録によれば申立人主張の(一)の事実および(二)の事実中本件物件について申立人主張のように仮差押執行がなされたこと右仮差押の執行後、有限会社名港プロパンガスが仮差押に違反して本件物件の占有を有限会社名港液化ガスに移転せしめたことが認められる。

(二)  右事実によれば有限会社名港液化ガスの占有は仮差押債権者たる竹田照之に対する関係においては同人に対抗し得ないこと明であるが、仮差押事件の第三者である被申立人との間においては右物件の占有は有効に有限会社名港液化ガスに移転したものというべきである。従つて本件仮処分中債務者である有限会社液化ガスの占有をうばい執行官の占有に移す部分は仮差押と何等抵触せず有効に執行し得るものというべきである。又本件仮処分中本件物件の占有移転および処分禁止を命ずる部分はもともと仮差押と抵触しないから有効に執行し得るものと解すべきである。

(三)  右判断に反する申立人の法律上の見解は当裁判所の採用しないところである。

(四)  以上の理由により本件執行は何等違法の点はないから本件異議申立を却下し主文のとおり決定する。(奥村義雄)

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